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こんばんは、河野貴明です。
突然ですが大ピンチです。誰か助けてください。
「貴明、ちゃんと肩まで浸からないと風邪ひくで」
「あ、うん」
「こ、こっち寄るなこのスケベーっ!」
具体的に何がピンチかと言うと
お 風 呂 は い っ て ま す 。
珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんと一緒に。
「ご、ごめん」
「瑠璃ちゃん、いじわる言ったらアカンで〜。ちゃんとお風呂に浸からないと貴明風邪ひくやんか」
「貴明なんか風邪ひいて、のたれ死ねばええんや」
珊瑚ちゃんの家のお風呂、我が家のバスルームなんか比べ物にならないくらい広くて、浴槽も2回りは大きいんだけど。
けどさすがに、3人も湯船に浸かっていれば体のどこかは触れ合ってしまうわけで。
肩まで浸かろうものなら、そりゃもうばっちりしっかり珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんの肌のぬくもりが伝わってきて。
「お、俺はこれでいいよ。ほら、よくテレビでも半身浴が体にいいって言ってるだろ?」
「あかんて。お風呂はきちんと肩まで浸かるもんや」
うわ うわ うわ、か、肩を掴まないで。
さ、珊瑚ちゃん、立ち上がろうとしないで。
見えちゃう〜
「さんちゃんにベタベタ触るな、このへんたい貴明!!」
「触ってないったら!」
むしろ触られているのはこっちな訳で。
やめて、珊瑚ちゃんやめて、そんなところ触るのは・・・・・・あっ、あっ、あっ
「おれもうあがるよさんごちゃんもるりちゃんもゆっくりはいってて」
これ以上は本当にヤバイ。
なにがヤバイってお風呂以外のもので今にものぼせ上がりそうなことがヤバイ。
早く頭に上った血を冷まさないと、こ、このままじゃ本当に。
「えー、つまらんなぁ。お風呂はもっとゆっくりはいるもんやで」
つまらないっておっしゃられても珊瑚ちゃん。
あなたはここに一匹のケダモノを生み出すことをご所望ですか!?
「あー、そや〜。なあ、貴明。それじゃあ最後にいっこだけお願いがあるんやけど」
「お、お願い?」
それは何でございますでしょうか。できるだけ、できるだけ手早く簡単な物で。
「背中の洗いっこ〜」
「洗いっ゛!?」
「こっち向くなすけべーっ!」
瑠璃ちゃんの水しぶき攻撃が顔面をヒット。
慌てて壁を向くけど・・・・・・ちょっとだけ、見えちゃった・・・・・・
「あかんよさんちゃん。貴明にそんなことさせたら、さんちゃん襲われてしまうで」
「貴明、ウチのこと襲うん?」
「襲わないよ」
でもこっちの理性が残っているうちに、早くここから避難させて。
「ほら、貴明もこう言ってるで。だから洗いっこや〜」
「貴明の言うことなんて信用したらあかん。気を許すと骨までしゃぶられてしまうで」
いや、そんな悪徳サラ金業者じゃないんだから。
「ん〜、それじゃあウチが貴明の背中洗ったる。それなら問題なしや」
いや、それほとんど変わってないからって、いま後ろでザバーって音がしたザバーって。
「貴明こっちむくな」
思いっきり首を縦に振ります。とてもじゃないですが、いま後ろを振り向く度胸はありません。
ああ、ペタペタとタイルの上を歩く珊瑚ちゃんの足音が。
「貴明、座ってくれんと背中洗えんやん」
「あうぅ、さんちゃんー」
これは、もう観念しろと言うことなんでしょうか神様。
たのむ。持ってくれ、俺の理性。
「貴明の背中、おっきいけど肌スベスベやー。たまねーちゃんが触りたがるのも無理ないわ」
背中を石鹸の付いたタオルが、珊瑚ちゃんの細い指が!!
うわ うわ! うわ!!
「なあー、瑠璃ちゃんも触ってみん? 貴明の背中、すべすべしてて気持ちええで〜」
「い、いらん。ウチは結構や」
落ちつくんだ‥‥‥。『素数』を数えて落ちつくんだ‥‥‥。『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字‥‥‥、俺に理性を与えてくれる。
「そうなん? こんなに気持ちええのに、もったいないなぁ」
いち、さん、ごぅ、なな、ぎゅうっ゛!?
珊瑚ちゃん、背中に当たってるどこ当ててるの当たってるぅっ!!
「さ、珊瑚ちゃん止めてっ・・・・・・あ」
「さんちゃんあかんて・・・・・・え?」
慌てて振り向いたものだから、慌てて立ち上がった瑠璃ちゃんの、可愛らしい二つのふくらみが・・・・・・
「瑠璃ちゃん、大胆やなぁ」
・・・・・・えーっと・・・・・・いつものお約束としてこの次は
「このっ、ごーかんまーっ!!」
目の前を一瞬黒い影が横切ったかと思うと、顔面全体に鈍い衝撃が。
ああ、意識が遠ざかる。
瑠璃ちゃん、ありがとう。これで本物の強姦魔にはならなくてすみそうだよ。
でも、でもね、珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも。
次からはお願いだから俺がお風呂にいるときは、入ってこないで貰えると助かるな。
終