1000-01-01から1年間の記事一覧

「本当にご主人様は、シルファがいないとダメダメのダメっこさんなのです」 「め、面目ない」 それでも、ショッピングカートを押して、スーパーの陳列棚を眺めるシルファちゃんの表情はとっても嬉しそうで。 俺も、嬉しい。シルファちゃんに謝りながら、けれ…

(注意)これは、ToHeat2AnotherDays発売前に発表した作品になります。 (注意2)俺もミルファというかAD自体、あそこまではっちゃけた作りしてるとは思わなかったよ。 「なーなー貴明。楽しみにしとってなー☆」 「え、何を?」 「内緒…

クマ吉と一緒にNo.4

「ちょっとタカ坊、このあいだは一体どうしちゃったのよ」 朝、いつものように坂の下で挨拶をすると、なぜかタマ姉はそんなことを聞いてきた。 「この間、って?」 まずい、身に覚えが全く無い。知らないうちに俺、なにかやってたか? 「この間のお昼休みよ…

クマ吉と一緒にNo3

「で、たかあきー、その後、何か進展はあったのかぁ?」 坂の途中、そろそろ校門が見えてきそうなところで、雄二がいきなり聞いてきた。 しかも顔にはいやらしいくらいの笑顔を貼り付けて。 「進展って、何のことだ?」 「またまたー、とぼけちゃってこのー…

クマ吉と一緒にNo2

「よっ、おはよーさん」 朝、いつもの場所で雄二とタマ姉に合流する。 「お前、最近なんだかご機嫌じゃねえか。なんかあったのか?」 ご機嫌といわれても、ピンとこない。俺、そんなに浮かれてるように見えるか? 「ん〜、浮かれてるっていうより、なんだか…

クマ吉と一緒に

「タマ姉はあいかわらずだな」 底力を見せろって言われたって、俺にそんな物があるのかどうかだってわからない。 「その時が来たら、できるだけ考えることにするよ」 ったく、いつもタマ姉は言いたいことを言ってくれるよな。 俺は苦笑すると、タマ姉の言葉…

夕飯の準備と洗濯物と

お昼も過ぎて。 そろそろ瑠璃様に珊瑚様、それに、貴明さんが帰ってくる時間。 今日のお夕食は、いつも行く八百屋さんに良いおナスが売っていましたし、マーボーナスにしましょうか。それだけではお口も飽きてしまいますし、さっぱりとした冬瓜のスープも一…

『そういち君、ふぁい、めひあはれ』 『いやいやいや、ここ、公園だし。パブリックな場所でビスケット口移しというのはちょっと、どうかと思うんですよ』 『ふぁい』 『そんな悲しそうな顔されてもですねダメなものは・・・・・・一回、だけだぞ?』 『ふん』 『け…

ゆさゆさと体をゆすられる。 イスの下からは、細かな振動。 俺は柔らかな感触に体を預けていて。シャンプーの良い香りがする。 耳元で、誰かに俺の名前を呼ばれて、ゆっくりと目を開ける。 ──次は、市立病院前、市立病院前でございます。お降りの方は合図、…

「河野貴明」 名前を呼ばれて、“それ”を受け取りに教卓の前まで進む。 先週やった、実力テストの答案用紙。出来ることなら一生、返してくれなくったって良いのに。 周囲にはもう、今にも死んでしまいそうなくらい落ち込んでる奴もいるけれど。良かった。何と…

珊瑚と瑠璃、二人の後ろから歩いていたイルファが、ふとそのショーウィンドーの前で立ち止まった。 何か目が離せない物が飾ってあるのか、ガラスの中をじっと見つめるイルファ。 イルファが付いて来ていないことに瑠璃が気が付いて声を掛けるまで、ずっとそ…

向坂家のお風呂は広い。イルファの住む、姫百合珊瑚のマンションもイルファに珊瑚、それに愛する瑠璃様貴明さん4人が同時に入ったって、体を動かす余裕があるくらい広いけれど。 総檜造の向坂家のお風呂は、そんな珊瑚のマンションですら霞むほど、広くて立…

たまにはベッドから起きて

「ただいま戻りました」 玄関が開く音と一緒に、イルファさんの声が聞こえる。出迎えると、流石に疲れた様子だ。 「お帰り。遅かったけど、何かあったの?」 今日はイルファさんの定期メンテナンスの日だった。 本来はメイドロボは、そんなにメンテナンスし…

「だぁぁぁぁーっ!!」 季節外れのにわか雨に、俺は慌ててマンションに駆け込む。 学校を出た時には晴れていたのに、ちょっと曇ってきたかなと思っていると、駅前に出る頃にはバケツをひっくり返したような雨になっていた。 もちろん傘なんて持っていなかっ…

「イルファさん」 リビングに向かうと、キッチンでイルファさんが食器を拭いているところだった。 「イルファさん、俺の靴下が無いんだけど」 カチャカチャと音を立てて、丁寧に食洗機のお皿を拭くイルファさん。 「どこにしまってあったっけ? イルファさん…

夕暮れ時のアーケードは、俺たちと同じような買い物客で賑わっていた。 夕飯の材料を買いにきた主婦や、学校帰りに立ち寄った学生。中には二人で買い物に来ているんだろう。仲良く歩く中年の夫婦の姿もある。 それと数は少ないけれど、どこかの家で働くメイ…

薄く湯気の漂うお風呂場で、全身を延ばして、肩までお湯に浸かる。 それまでの疲れが全部取れるような快感に、日本人に生まれて本当に良かったと思うね。 珊瑚ちゃんの家のお風呂は特に広いし、湯船に寝そべったってまだ余裕がある。 「はぁー」 思わず声が…

スーパーの入り口をくぐると、もう迷いもせずインスタント食品のコーナーに向かう。一人暮らしもこれだけ長くなると、今更カップラーメンがどこに並んでいるかで迷うこともない。 まあ、栄養が偏るって言うタマ姉やこのみの言っていることもわかるんだけど。…

テレビの中では、ようやく倒すことのできた蛇のボスが(なぜか)爆発しながら倒れていく。 苦しい戦いだった。 コンティニューを続けること幾十回。絶叫を上げて灰になっていくボスキャラに、俺は安堵と満足感の混じった溜息をついて、画面を振り返った。 「…

2月14日セントバレンタインデー! 女の子が好きな男性にその気持ちを伝える日。だが男から女の子にその想いをぶちまけてはいけないなんて誰が決めた!! 太平洋を挟んでアメリカに居るささらに、俺は、この聖なる日にずっと変わらない想いを伝えるんだ。 …

こんばんは、河野貴明です。 突然ですが大ピンチです。誰か助けてください。 「貴明、ちゃんと肩まで浸からないと風邪ひくで」 「あ、うん」 「こ、こっち寄るなこのスケベーっ!」 具体的に何がピンチかと言うと お 風 呂 は い っ て ま す 。 珊瑚ちゃん…

最近、向坂環は機嫌が悪い。 理由は簡単。4月から河野貴明と事あるごとにくっついてまわっているあの双子のせいだ。 いや、あの双子は別に問題ない。むしろ、あの女の子に対して臆病すぎる河野貴明には、良い経験だとさえおもっている。 では何が彼女の機嫌…

[TH2SS]

「ごめんなさい河野君。本の整理、手伝ってもらっちゃって」 本棚の向こう側から、小牧さんの申し訳無さそうな声が聞こえてくる。 「いいよいいよ。べつに用事があった訳じゃないし。1人でやるよりも、2人でやった方が早いんだからさ。この本、今日中に移…

続・ミステリ研究会の愉快な仲間

「タン タタ タタ〜タタ〜」 四月。 爽やかな風に乗って、どこからともなく、歌声が響いてきます。 「タタ〜 タ タタタタ〜」 学校の裏庭を歩く貴明君の耳にも、その歌声は届きました。 どこか懐かしい気持ちのするその歌声に誘われて。 歌声が聞こえる方向…

みすてり研究会の愉快な仲間

しがつにじゅうさんにち お昼休み。 付き合いの良い河野貴明君が、今日もミステリ研究会の部室に足を運んでみると。 いつのも第二用具室の中には、猿轡をかまされたうえ、椅子に縛り付けられた見知らぬ女の子がひとり。 「んっ、んんんー、んんんんんん────…

そばに、ずっと、一緒に

枕元で目覚まし時計がなってる。 もう、朝か・・・・・・なんだか、とても寝足りない気がする。朝眠たいのはいつも変わらないけど、今日は、特に・・・・・・ 「たかくーん、起きてるー?」 ああ、いけない、このみが迎に来た。早く・・・・・・起きなくちゃ…

耳掃除と膝枕と

「んっ、くっあぁっ・・・・・・」 「もう、貴明さん。動かないでください」 よく晴れた休日の午後。珊瑚ちゃんのマンションのリビング。 俺はイルファさんのなすがままに、情けない声をあげていた。 「くうぅぅっっ」 「貴明さん、ここが気持ち良いんですか…

カラーンカラーンと、はっぴを着た男性がまるで親の仇のように鐘を振る。 後ろに並ぶ列と商店街を行く野次馬からどよめきの声が上がる。 皿の上には、金色に光る玉が一つ。 「おおあたりー! 特賞、温泉一泊二日ペア旅行ご招待!!」 「あら、え、その・・・…

私ができること

お預かりしていた鍵を取り出して扉を開けます。 家人が留守の家の中に入ると、別にゴミが散乱しているわけではないけれど、なんとなく散らかった雰囲気のリビング。 「もう、先週お掃除したばかりなのに。男性の方というのは、皆さんこうなのでしょうか」 溜…

あの日、別の場所で

「決裂。最後まで戦うってさ」 まーりゃん先輩の声に、周囲の先生たちからどよめきの声が上がる。 タカ坊とささら、ふたりを止めようと意気を上げる大人たちを見ながら、私たちもまた小さく目配せをする。ふたりが明日ちゃんと逃げられるよう、今夜の内に用…