TH2SS

最近、向坂環は機嫌が悪い。 理由は簡単。4月から河野貴明と事あるごとにくっついてまわっているあの双子のせいだ。 いや、あの双子は別に問題ない。むしろ、あの女の子に対して臆病すぎる河野貴明には、良い経験だとさえおもっている。 では何が彼女の機嫌…

続・ミステリ研究会の愉快な仲間

「タン タタ タタ〜タタ〜」 四月。 爽やかな風に乗って、どこからともなく、歌声が響いてきます。 「タタ〜 タ タタタタ〜」 学校の裏庭を歩く貴明君の耳にも、その歌声は届きました。 どこか懐かしい気持ちのするその歌声に誘われて。 歌声が聞こえる方向…

みすてり研究会の愉快な仲間

しがつにじゅうさんにち お昼休み。 付き合いの良い河野貴明君が、今日もミステリ研究会の部室に足を運んでみると。 いつのも第二用具室の中には、猿轡をかまされたうえ、椅子に縛り付けられた見知らぬ女の子がひとり。 「んっ、んんんー、んんんんんん────…

そばに、ずっと、一緒に

枕元で目覚まし時計がなってる。 もう、朝か・・・・・・なんだか、とても寝足りない気がする。朝眠たいのはいつも変わらないけど、今日は、特に・・・・・・ 「たかくーん、起きてるー?」 ああ、いけない、このみが迎に来た。早く・・・・・・起きなくちゃ…

耳掃除と膝枕と

「んっ、くっあぁっ・・・・・・」 「もう、貴明さん。動かないでください」 よく晴れた休日の午後。珊瑚ちゃんのマンションのリビング。 俺はイルファさんのなすがままに、情けない声をあげていた。 「くうぅぅっっ」 「貴明さん、ここが気持ち良いんですか…

カラーンカラーンと、はっぴを着た男性がまるで親の仇のように鐘を振る。 後ろに並ぶ列と商店街を行く野次馬からどよめきの声が上がる。 皿の上には、金色に光る玉が一つ。 「おおあたりー! 特賞、温泉一泊二日ペア旅行ご招待!!」 「あら、え、その・・・…

私ができること

お預かりしていた鍵を取り出して扉を開けます。 家人が留守の家の中に入ると、別にゴミが散乱しているわけではないけれど、なんとなく散らかった雰囲気のリビング。 「もう、先週お掃除したばかりなのに。男性の方というのは、皆さんこうなのでしょうか」 溜…

あの日、別の場所で

「決裂。最後まで戦うってさ」 まーりゃん先輩の声に、周囲の先生たちからどよめきの声が上がる。 タカ坊とささら、ふたりを止めようと意気を上げる大人たちを見ながら、私たちもまた小さく目配せをする。ふたりが明日ちゃんと逃げられるよう、今夜の内に用…

新しい家族が生まれた日に

その日の夕方。 来栖川エレクトロニクスHM開発課には2人の来客があった。 1人は眠たいわけでもないのに眠たそうな顔をしている、二十歳くらいの青年。 もう1人は緑色の髪をした、子供のようなメイドロボ。 「あ、ああの、その、主任さん、お、お久しぶりで…

5月6日

カーテンからもれてくる朝の光、それと体にかかる重たさで目が覚めた。 まだ少しぼぅっとする頭で、その心地の良い重量感を確かめる。 右側には、俺の腕を枕にして抱き合っている珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが。 左側には、俺の体に寄り添うイルファさんが。 3…

彼女と一緒に過ごす朝

布団の中から手を伸ばし、目覚まし時計のスイッチをオフにする。 ・・・・・・ん・・・・・・う。 あ・・・・・・れ? もう朝か・・・・・・。 布団に入ってから、まだほんの少ししか立っていないような気がする。 半分眠ったままの腕をのろのろと動かし、カ…